50s保険選び方ナビ

50代の医療費負担どう備える?高額療養費制度を知って医療保険を見直そう

Tags: 医療保険, 高額療養費制度, 50代, 医療費, 保険見直し

50代の医療費への不安と賢い備え方

50代を迎えると、ご自身の健康や将来の医療費について、漠然とした不安を感じることがあるかもしれません。厚生労働省の統計などでも、年齢が上がるにつれて一人当たりの医療費が増加する傾向が示されています。大きな病気やケガで入院・手術が必要になった場合、医療費の自己負担がどのくらいになるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。

このような医療費への備えとして、医療保険の加入や見直しを検討する方も多いですが、その前にぜひ知っておいていただきたい公的制度があります。それが「高額療養費制度」です。

この記事では、50代の方が知っておきたい医療費の現状と、高額療養費制度の仕組み、そしてこの制度を踏まえた医療保険の役割と選び方について解説いたします。公的な制度と民間の保険を理解することで、ご自身の状況に合った無理のない備えを検討するための一助となれば幸いです。

50代で知っておきたい医療費の現状

一般的に、50代、60代と年齢を重ねるにつれて、医療機関にかかる頻度や、一度の治療にかかる費用が増える傾向にあります。例えば、入院日数はかつてに比べて短くなっていますが、その分、診断や治療が密に行われ、医療技術の進歩に伴い高度な医療を受ける機会も増えています。

国民健康保険や協会けんぽなどの公的医療保険制度があるため、医療費の窓口負担は年齢や所得によって1割から3割となっています。しかし、例えば窓口負担が3割の場合でも、医療費の総額が高額になった場合には、自己負担額もかなりの金額になる可能性があります。この高額な自己負担を軽減するための制度が、次に説明する高額療養費制度です。

知っておきたい公的制度:高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、医療機関の窓口で支払った医療費が、ひと月(月の初めから終わりまで)で自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分の金額が払い戻される制度です。この制度は、加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)によって運営されています。

自己負担限度額について

自己負担限度額は、年齢や所得によって細かく定められています。例えば、70歳未満の方の場合、所得に応じていくつかの区分に分かれています。

所得が高い区分や低い区分では、この計算式や限度額が異なります。また、70歳以上の方も別途自己負担限度額が設定されています。

多数回該当について

直近12ヶ月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目からはさらに自己負担限度額が引き下げられる「多数回該当」という仕組みもあります。これにより、長期にわたる療養が必要になった場合の自己負担が軽減されます。

高額療養費制度を利用するには、事後に払い戻しの申請を行うのが原則ですが、事前に「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口で提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までとすることも可能です。

高額療養費制度だけでは賄えない費用

高額療養費制度は、公的医療保険が適用される医療費(診察、検査、投薬、手術、入院料など)の自己負担分に対して適用される制度です。しかし、実際の療養生活では、高額療養費制度だけではカバーできない費用も多く発生します。

具体的には、以下のような費用は高額療養費制度の対象外です。

これらの費用は、医療費総額に加算されて自己負担となります。特に、入院が長期にわたったり、先進医療が必要になったりした場合、これらの自己負担が大きな負担となる可能性があります。

医療保険の役割:高額療養費制度を補う

民間の医療保険は、公的な高額療養費制度でカバーしきれない医療費の自己負担分や、その他の諸費用に備える役割を果たします。医療保険から支払われる給付金は、主に以下のようなものがあります。

これらの給付金を活用することで、高額療養費制度適用後の自己負担額に加え、食事代や差額ベッド代、交通費、さらには休業中の収入減などもカバーすることが期待できます。

50代向け医療保険の選び方のポイント

高額療養費制度を踏まえた上で、50代の方が医療保険を選ぶ、あるいは見直す際に検討したいポイントをいくつかご紹介します。

  1. 入院日額の設定: 公的医療保険で自己負担限度額があることを踏まえると、過剰に高額な入院日額を設定する必要はないかもしれません。ご自身の収入や貯蓄状況、どのくらいの自己負担なら許容できるかを考え、必要最低限に抑えることも保険料負担を軽減する方法の一つです。
  2. 短期入院への備え(一時金): 最近の入院は短期化する傾向があります。入院日数が短くてもまとまった金額を受け取れる一時金がある商品や特約は、自己負担限度額に達しない短期入院の場合でも役立つ可能性があります。
  3. 先進医療特約の検討: 高額療養費制度の対象外である先進医療は、治療内容によっては高額になることがあります。万が一に備えたい場合は、先進医療特約を付加することを検討すると良いでしょう。多くの医療保険に比較的安価な保険料で付加できる場合が多いです。
  4. 保険料の払込期間: 一生涯保障が続く終身医療保険の場合、保険料の払込期間を「終身払い」とするか、「60歳まで」「65歳まで」といった期間で払い終えるかを選択できる場合があります。期間払いにすると、払い込み期間中の保険料負担は大きくなりますが、老後の保険料負担がなくなります。老後の家計を考慮して検討することが大切です。
  5. 健康状態に応じた選択肢: もし、現在健康に不安がある場合や、過去に病気をしたことがある場合でも、加入できる可能性がある医療保険があります。「引受基準緩和型医療保険」や「無選択型医療保険」といった選択肢も存在しますが、これらは一般的に保険料が割増しになっていたり、保障に一定の制限があったりする場合があります。まずは通常の医療保険に申し込んでみるか、複数の保険会社の条件を比較検討することが推奨されます。

高額療養費制度を踏まえた医療保険の見直し

現在加入している医療保険がある場合、その保障内容がご自身の現在の状況や将来の懸念事項に合っているか、高額療養費制度を踏まえて見直してみましょう。

もし、加入している医療保険が古いタイプで、短期入院に対応した一時金がない場合や、先進医療特約が付いていない場合は、見直しを検討する価値があるかもしれません。ただし、健康状態によっては新しい保険に加入しづらくなる可能性もあるため、慎重な検討が必要です。

まとめ:公的制度と民間保険で賢く備える

50代における医療費への備えは、将来の安心のために重要な課題です。医療費の自己負担を軽減する公的な高額療養費制度を正しく理解することは、過不足のない保険選びの第一歩となります。

高額療養費制度でカバーできない費用や、短期入院への備え、先進医療への対応などを検討する際に、民間の医療保険が役立ちます。ご自身の健康状態、収入、貯蓄状況、そしてどのようなリスクに備えたいのかを明確にし、高額療養費制度を踏まえた上で、必要な保障内容と保険料のバランスが取れた医療保険を選択することが賢い備え方と言えるでしょう。

もし、ご自身の状況に合った保険選びに迷う場合は、保険の専門家などに相談してみることも一つの方法です。複数の保険会社の商品を比較検討し、納得のいく備えをしてください。