50s保険選び方ナビ

50代からの保険選び:老後の生活費と医療・介護費...現実的な備え方と保険の活用

Tags: 50代, 保険選び, 老後資金, 医療保険, 介護保険, 貯蓄型保険, 現実的な備え

はじめに:50代が抱える将来へのお金の不安

50代は、ご自身のキャリアや子育てが一段落し、少し先の老後や、ご両親、そしてご自身の健康について考え始める時期かもしれません。特に「老後の生活費はいくら必要なのだろうか」「病気や介護になったら、お金は足りるだろうか」といった、将来へのお金の不安を漠然と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この年代で生命保険を検討する際には、若い頃に加入した保険を見直したり、これから起こりうるリスクに備えるための新しい保険を探したりすることがあります。しかし、保険には様々な種類があり、どれを選べば良いのか迷ってしまうことも少なくありません。

この記事では、50代の方が老後の生活費、医療費、介護費に対して、どのように現実的に備えるかを考え、その中で生命保険がどのように役立つのかを分かりやすく解説します。ご自身の状況に合わせて、将来の不安を少しでも解消するためのヒントとなれば幸いです。

50代が考えておきたい「老後の必要生活費」と「医療・介護費」

将来に備えるためには、まず「どれくらいのお金が必要になる可能性があるか」の目安を知ることが大切です。

老後の生活費はいくら必要?

総務省の家計調査報告(2022年平均)によると、夫婦二人の無職世帯(高齢夫婦世帯)の1ヶ月あたりの平均的な実収入は約23.7万円、そのうち社会保障給付(主に公的年金)が約22万円となっています。これに対し、実支出(生活費)は約26.9万円でした。

つまり、公的年金などの収入だけでは、毎月約3.2万円が不足しているという結果が出ています。この不足分は、退職金やこれまでの貯蓄を取り崩して賄う必要があります。

単身無職世帯(高齢単身世帯)の場合、1ヶ月あたりの平均的な実収入は約13.5万円(社会保障給付約12.5万円)に対し、実支出は約15.5万円で、毎月約2万円が不足しています。

もちろん、これらの金額はあくまで平均値であり、住んでいる地域やライフスタイル、持ち家か賃貸かなどによって、必要な生活費は大きく異なります。しかし、公的年金だけでは生活費を全て賄うのが難しい可能性があることを理解しておくことが重要です。

医療費・介護費はどのくらいかかる可能性がある?

病気やケガ、あるいは加齢による介護が必要になった場合にかかる費用も心配事の一つです。

これらの費用は予測が難しく、一度に大きな金額が必要になったり、長期にわたって継続的に支出が発生したりする可能性があります。

不安を解消する「現実的な備え」としての保険活用

では、これらの老後生活費の不足分や、予測不能な医療・介護費用に対して、保険はどのように役立つのでしょうか。保険は、「もしも」の事態が起こったときに、経済的な負担を軽減するための有効なツールとなり得ます。

老後・医療・介護費に備える主な保険の種類と活用法

50代の方が特に関心を持つ可能性のある、老後や医療・介護に備えるための主な保険の種類をご紹介します。

医療保険

病気やケガで入院・手術・通院をした場合の経済的な負担を軽減するための保険です。 * 主な保障内容: 入院給付金(入院日数に応じて支払われる)、手術給付金(手術の種類に応じて支払われる)、通院給付金など。 * 50代のニーズ: 50代になると、入院や手術のリスクが統計的に高まる傾向にあります。生活習慣病(糖尿病、高血圧性疾患、がん、心疾患、脳血管疾患など)にかかるリスクも増えるため、これらの病気で入院した場合に給付金が上乗せされる「七大生活習慣病特約」などを検討する方もいらっしゃいます。 * 高額療養費制度との関係: 高額療養費制度で自己負担額を抑えることはできますが、保険適用外の治療費や差額ベッド代、長期入院による収入減など、全てをカバーできるわけではありません。医療保険は、公的医療保険だけでは不足する自己負担分や、医療費以外の諸費用に備える役割を果たします。

がん保険

がんと診断された場合や、がんの治療のためにかかる費用に特化した保険です。 * 主な保障内容: がんと診断された時にまとまった一時金が受け取れる診断給付金、入院給付金、手術給付金、抗がん剤治療給付金など。 * 活用法: がんは長期の治療や、抗がん剤治療、先進医療など、治療法によって高額な費用がかかることがあります。診断給付金は、治療費だけでなく、仕事を休んだ間の生活費など、幅広い用途に活用できます。

介護保険(民間)

公的介護保険の給付対象外のサービス費用や、自己負担分に備えるための保険です。 * 主な保障内容: 公的な要介護認定(要支援を除く)を受けた場合に、一時金や年金形式で保険金が支払われます。 * 活用法: 介護が必要になった際に、自宅の改修費用や介護サービスの自己負担分、あるいはご家族の介護による経済的な負担(離職など)を軽減するために活用できます。

貯蓄型保険(終身保険、養老保険、個人年金保険など)

保障と同時に資産形成(貯蓄)の機能を持つ保険です。 * 主な種類と活用法: * 終身保険: 一生涯の死亡保障が得られ、保険料払込期間が終了した後の解約返戻率(払い込んだ保険料に対する解約時に戻ってくるお金の割合)が高まる傾向があります。保険料払込期間を短く設定することで、将来の保障を確保しつつ、一定期間後の解約返戻金を老後資金として活用するといった方法も考えられます。 * 個人年金保険: 契約時に定めた年齢(例:60歳や65歳)から、あらかじめ定めた期間、年金としてお金を受け取れる保険です。公的年金に上乗せする形で、老後資金の柱の一つとして活用できます。 * 養老保険: 保障期間中に死亡または高度障害になった場合は死亡保険金、満期まで生存していた場合は死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れる保険です。貯蓄性が高い一方で、保険料は割高になる傾向があります。

これらの保険は、ご自身の現在の健康状態や、将来どのようなリスクにどの程度備えたいかによって、最適な種類や組み合わせが異なります。

「現実的な備え」のための保険選びのポイント

50代から保険を選ぶ、あるいは見直す際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。

  1. 現在の家計状況と払える保険料を確認する 毎月の保険料は、長期にわたって払い続けるものです。家計を圧迫しない範囲で、無理なく払い続けられる金額の上限を把握することが最も重要です。将来のインフレなども考慮し、少し余裕を持った計画が安心につながります。

  2. 公的な保障を理解する 日本の公的医療保険制度や公的年金制度、公的介護保険制度は非常に手厚いものです。これらの制度で「どこまで保障されるのか」「自己負担はどのくらい発生する可能性があるのか」を理解することで、民間の保険で補うべき範囲が見えてきます。

  3. 必要な保障額(目標額)を具体的に考える

    • 老後資金: 公的年金の見込み額を確認し、「ゆとりある老後」に必要な生活費との差額を算出します。この差額を、貯蓄や退職金、そして貯蓄型保険などで準備できるかを考えます。
    • 医療・介護費: 高額療養費制度などを踏まえた上で、自己負担として準備しておきたい金額の目標を設定します。一時金でまとめて受け取りたいのか、あるいは月々の費用に備えたいのかによって、選ぶ保険の種類も変わってきます。 例えば、生命保険文化センターの調査を参考に、「介護一時費用74万円+月額費用8.3万円×5年=約500万円」を一つの目安として、どこまで保険でカバーしたいかを考えることができます。

    例:現在55歳。65歳までに月々〇円を保険料に充て、老後資金として△△円の準備、医療・介護費に□□円の備えを目標とする、といったように具体的に考えると検討が進みやすくなります。

  4. 保険の種類を効果的に組み合わせる 一つの保険ですべてのリスクに完璧に備えることは難しい場合が多いです。医療保険で病気やケガに、介護保険で介護状態に、個人年金保険や終身保険(貯蓄機能)で老後資金に、といったように、それぞれの保険の特性を理解し、目的に応じて複数の保険を組み合わせることで、効率的に備えることができます。

  5. 保険期間と保険料払込期間を検討する

    • 保険期間: 一生涯保障が必要な「終身型」が良いのか、それとも一定期間だけ備えられれば十分な「定期型」が良いのかを考えます。50代の場合、医療保険や介護保険、死亡保障などは、終身型で一生涯のリスクに備えたいと考える方が多いかもしれません。
    • 保険料払込期間: 保険料をいつまで払い続けるかを選択します。例えば、終身保険でも「終身払い」と「60歳払い込み完了」などがあります。早く払い終えれば将来の負担はなくなりますが、その分、月々の保険料は高くなります。老後の収入減を見越して、リタイアするまでに払い終えるプランを選ぶことも検討が必要です。

保険を活用する際の注意点

保険は有効な備えとなりますが、いくつかの注意点があります。

まとめ:将来への不安を解消するために、今できることから

50代からの保険選びは、「老後の生活費は足りるのか」「医療や介護が必要になったらどうしよう」といった将来への不安に、具体的に向き合うことでもあります。まずは、ご自身の現在の家計状況や貯蓄額、そして公的な保障でどこまでカバーできるのかを確認することから始めてみましょう。

その上で、将来必要になる可能性のある金額の目安を把握し、保険がその不足分を補うツールとしてどのように役立つかを検討することが、「現実的な備え」につながります。医療保険、がん保険、介護保険、そして貯蓄型保険など、それぞれの保険の特徴を理解し、ご自身の目的に合った保険を無理のない範囲で選ぶことが大切です。

保険選びに迷う場合は、複数の保険商品を比較したり、専門家のアドバイスを聞いたりすることも有効な手段です。将来への漠然とした不安を具体的な行動に変えていくことで、安心した老後を迎えるための準備を進めることができるでしょう。