50代で持病や既往症がある場合の保険選び:加入の可能性と注意点
はじめに:50代、健康状態への不安と保険
50代になると、これまでの生活習慣の影響などから、健康診断で指摘を受けたり、持病が見つかったりする方も増えてくる傾向にあります。ご自身の体のことや、将来への漠然とした不安を感じる中で、「万が一のことがあった時や病気になった時に備えたいけれど、健康状態に不安があるから保険にはもう入れないのではないか」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、持病や既往症がある場合でも、保険に加入できる可能性はあります。この記事では、50代で健康状態に不安を感じる方が生命保険や医療保険を検討する際に知っておきたい、加入の可能性や保険の種類、そして保険選びのポイントや注意点について解説します。
健康状態は保険加入にどう影響するのか
一般的な生命保険や医療保険に加入する際には、現在の健康状態や過去の病歴(既往症)について、保険会社に正確に告知する義務があります。これを「告知義務」と呼びます。保険会社は、この告知された情報をもとに、保険を引き受けるかどうか、あるいはどのような条件で引き受けるかを判断します。
告知義務の対象となるのは、告知書に記載されている項目です。一般的には、過去の病気やケガ、現在の体の状態、飲んでいる薬、直近の健康診断の結果などが含まれます。告知が必要な期間は保険会社や商品によって異なりますが、過去5年以内、3年以内などと定められていることが多いです。
告知内容によっては、以下のような判断がなされる場合があります。
- 無条件で加入できる: 告知内容に問題がなく、健康状態が良好であると判断された場合です。
- 特別な条件(特条件)付きで加入できる: 告知内容に懸念があっても、保障内容を一部変更したり(特定部位不担保など)、保険料を割り増ししたり(保険料割増)することで加入できる場合があります。
- 加入できない(謝絶): 告知内容が保険会社の引受基準を満たさず、加入が難しいと判断された場合です。
持病や既往症があっても入れる可能性のある保険の種類
健康状態に不安がある場合でも、加入を検討できる保険はいくつかあります。
1. 通常の保険(条件付き加入の可能性)
まずは、健康状態が比較的安定している場合や、過去の病気から十分に期間が経過している場合などに、通常の生命保険や医療保険への加入を検討してみる価値があります。
たとえ告知が必要な既往症があったとしても、その病気の種類や程度、現在の回復状況などによっては、無条件で加入できたり、「特定部位不担保」(特定の部位や疾患に関する保障を一定期間なくすこと)や「保険料割増」といった特条件付きで加入できたりする可能性があります。
2. 引受基準緩和型保険(限定告知型保険)
告知項目を通常の保険より少なくし、加入のハードルを下げた保険です。「限定告知型保険」と呼ばれることもあります。健康状態に不安があり、通常の保険では加入が難しかった方が検討しやすい選択肢の一つです。
告知項目は保険会社によって異なりますが、一般的には以下の3~5つの質問に「はい」「いいえ」で答える形式が多いです。
- 直近〇ヶ月以内に入院や手術、特定の病気で医師の診察・検査・治療を受けたか
- 過去〇年以内に、特定の病気で入院や手術を受けたか
- 現在、がんや肝硬変など、特定の病気と診断されているか
これらの質問にすべて「いいえ」と回答できれば、原則として加入できます。医師の診査(健康診断結果の提出や医師の診察)は不要な場合がほとんどです。
引受基準緩和型保険のメリット:
- 健康状態に不安がある方でも加入しやすい
- 告知項目が少なく、手続きが比較的簡単
引受基準緩和型保険のデメリット:
- 保険料が通常の保険に比べて割増されている(高め)
- 契約から一定期間(例:1年間)は、保険金や給付金の削減期間が設けられている場合が多い(例:死亡保険金が半額になるなど)
- 保障内容が通常の保険より限定的であることがある
保険料が高めに設定されているのは、健康状態に不安がある方も広く受け入れるため、保険会社のリスクが高くなるためです。
3. 無選択型保険
告知義務や医師の診査が一切なく、健康状態に関わらず誰でも加入できる保険です。極めて加入しやすい反面、保険料は引受基準緩和型保険よりもさらに割増されており、保障内容もかなり限定的である場合が多いです。また、契約初期の一定期間は保障が極めて制限される、あるいは全くないといった条件が付くのが一般的です。
50代で健康状態に不安がある場合の保険選びのポイント
持病や既往症がある状態で保険を検討する際に、確認しておきたいポイントです。
ポイント1:まずは通常の保険を検討する
健康状態に不安があるからといって、最初から引受基準緩和型保険だけを検討するのではなく、まずは通常の保険に加入できないか試してみることをおすすめします。病気の種類や程度によっては、特条件付きであっても通常の保険に加入できる可能性があり、その方が保障内容や保険料の面で有利になる場合が多いからです。複数の保険会社に相談してみると良いでしょう。
ポイント2:告知書は正確に記載する
保険加入時の告知は非常に重要です。現在の健康状態や過去の病歴について、告知書に記載されている質問に対し、正確かつ正直に回答する必要があります。事実と異なる告知(告知義務違反)があった場合、保険金や給付金が支払われなかったり、契約が解除されたりする可能性があります。医師に相談して告知書の記載内容を確認することも有効です。
ポイント3:本当に必要な保障は何かを考える
健康状態に不安があることで、保障を手厚くしたいと感じる方もいるかもしれませんが、まずはご自身のライフプランや経済状況を踏まえ、どのようなリスクに、どの程度の備えが必要なのかを冷静に検討することが大切です。
例えば、遺された家族のための死亡保障、病気やケガで入院・手術をした際の医療費の備え、将来の介護費用など、ご自身やご家族にとって本当に必要な保障は何かを明確にしましょう。保障内容がシンプルで分かりやすいものを選ぶのも一つの方法です。
ポイント4:保険料と保障内容のバランスを確認する
引受基準緩和型保険は保険料が割高になります。例えば、同じ保障内容でも、通常の保険と引受基準緩和型保険では保険料が大きく異なる場合があります。
(例) * 通常の医療保険:月払い保険料 〇,〇〇〇円 * 引受基準緩和型医療保険:月払い保険料 〇,〇〇〇円~〇,〇〇〇円程度になることもあります。
保険料は家計への負担となるため、継続して無理なく支払える保険料であるかを確認することも重要です。受けられる保障内容と支払う保険料のバランスをしっかり比較検討しましょう。
ポイント5:公的な保障制度も確認する
病気や介護が必要になった場合、日本の公的医療保険制度や介護保険制度から受けられる保障があります。例えば、医療費の自己負担額には上限が定められている「高額療養費制度」などです。
保険を検討する際には、これらの公的な保障でどの程度カバーできるのかを知っておくことで、民間の保険で準備すべき保障額の目安を立てやすくなります。
まとめ:健康状態に不安があっても、備えを諦めない
50代になり健康状態に変化があっても、「もう保険には入れない」と諦める必要はありません。通常の保険で条件付き加入の可能性を探ったり、告知項目が緩和された引受基準緩和型保険を検討したりと、様々な選択肢があります。
大切なのは、ご自身の健康状態を正確に告知した上で、本当に必要な保障は何かを見極め、複数の保険商品や保険会社を比較検討することです。
もし、ご自身の状況でどのような保険に入れるのか、どのような保障が必要なのか判断に迷う場合は、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談してみるのも良い方法です。プロの視点から、様々な保険会社の情報を踏まえてアドバイスを受けることができます。
将来への不安を少しでも和らげるためにも、ご自身の状況に合った保険選びを進めていくことが大切です。